つまりおれらリスナーが何言ったってカスラックの連中は「盗人猛々しい」くらいにしか思ってないわけだ

 実際のプロの音楽家が今日の状況をどのように考えているのか、それを語るにふさわしい人をいろいろと考えていった結果、平沢進氏に行き当たった。

 日本のテクノ・ニューウェーブシーンをリアルタイムで経験した年代の人間であれば、「平沢進」の名前を知らないはずはない。P-MODELのリーダー/ボーカリストであり、1989年以降はソロとしても活躍中である。

 同氏は1999年、まだ音楽配信など影も形もない頃に、自らのサイトでMP3を使った楽曲の音楽販売を開始した。文字通り音楽配信の先駆者である。

 またそれと並行してJASRACの権利支配のあり方に疑問を持ち、メジャーレーベルとの契約を自ら切り、作品の版権を引き上げて自分で管理するという方法に切り替えた。現役ミュージシャンで音楽配信著作権、補償金の話を聞くのに、これ以上ふさわしい人はいないだろう。

っつーことで言いたいことが言える立場にあるミュージシャン平沢進へのインタビュー記事。ステキ発言連発。

ステキ発言

平沢氏: 例えばメジャーなレコード会社で活動してたとしますよね。レコーディングが終わるとある日突然、出版会社から契約書が届くんですよ。で、契約してくれと。契約条項にいろいろ書いてあるんですけど、契約書が送られて来た時点で、JASRACにもう勝手に登録されているんです。残念ながらアーティストは、著作権に関してまったく疎い。同時に私自身も疎かったがために、そういうものだと思いこんでいたわけですね。それによって、出版会社に権利が永久譲渡されている曲というのがあったりするんですよ。で、JASRACで集金されたお金は、この出版会社を通るだけで50%引かれて、アーティストへ戻るという構造があるんですね。

まさに搾取だね。

平沢氏: 現実として私がやっているように、すでにミュージシャン自身が制作・流通・決済が個人で可能なわけですよね。そういう状況の中で、一つの大手が沢山の楽曲を収集して陳列台に並べるということにどれだけ意味があるのか、ということなんですけども。反対に自分の楽曲を常に自分の管理下に置いて、どのようにお客さんが来ているのかを自分でモニターしながら活動を続けていくことと、最終的にどっちがアーティストにとって利益が大きいのか。ミュージシャンとしてマスに支持されることよりも、音楽をやることの動機のほうが勝っている人にとっては、そういうマーケットは向かないですよね。

この最後の一文、カッコいいなあ。

――つまり音楽配信においても、DRMなど必要ないのだと。

平沢氏: 必要を感じてないですね。つまり私は音楽がデジタルコンテンツ化以前と今とでは、さほど変わりはないと思っているわけですね。昔はカセットでコピーして友達同士でやりとりしていたし、オンエアされたものをエアチェックしてコピーしていたわけですよね。それがデジタルコンテンツになったところで、何を騒ぐんだということですよ。不思議に思うのは、客を泥棒扱いして、オマエが泥棒ではないということを証明するために補償金を払えと、言ってるわけですよね。これ自体私には理解できません。プロテクトや補償金の話はビジネスの問題であって、コピーするしないは倫理の問題じゃないですか。彼らは倫理を大儀にして、ビジネスしているだけなんですよ。

これこそまさにヤクザの論理。否定されてるおれらの倫理。*1

――最後に、今話題になっているiPod補償金が実現されれば、ミュージシャン側は収入が増えることになりますが。

平沢氏: さあどうでしょう? 分配の資料でお分かりのように、意味不明のこういう数字が出てくるわけですから、私たちはカモですね。それは多少のおこぼれは頂戴してますけど、別にうれしくないです。ネットワーク配信が始まってデジタル化されたとたんに、JASRACが「コピーは犯罪だ」とリスナーを泥棒扱いするようになったのも、おそらくネットワーク、デジタルコンテンツの領域にまで権益を拡大したいということでしょう。いいマーケットを見つけたと思いますよ。(苦笑)

このままいくと、今後新しいメディアが出てくるたびに搾取ポイントが増えていくだけってこったな。「分配の資料」については下で引用。

録音補償金のナゾ

 実際に、平沢氏に対して支払われている録音補償金のリストを見せていただいた。これをよく見ると、面白いことがわかる。1993年にリリースされたP-MODELのアルバム「big body」に収録されている、「BIIIG EYE」と「BIG FOOT」という2曲に注目してみた。

 録音補償金は、過去4年分に遡って支払われているが、この2曲を見ると、CDの売り上げ枚数のところが「0」となっている。なにぶん古いアルバムのことであり、現在は入手難のため、これはわかる。

 だが補償金の徴収料金は、「BIG FOOT」が245円、「BIIIG EYE」が172円と、違いが出ている。同じアルバムで売り上げなし、しかもどちらもシングルカットされていない曲でなぜ補償金の額が違うのか。もちろんJASRACは、各曲が誰がどんなメディアに何回コピーしたかなど、まったく関知していないし、調べる手段も持っていない。

一応、アルバム“big body”はその前作“P-MODEL”とニコイチで“ゴールデン☆ベスト P-MODEL「P-MODEL」&「big body」”ってCDとして入手可能です。平沢的には不本意なのかも知れんけど。
とりあえず「BIIIG EYE」はイカスぞ。みんな聴いとけ。
ゴールデン☆ベスト P-MODEL「P-MODEL」&「big body」

ゴールデン☆ベスト P-MODEL「P-MODEL」&「big body」

*1:韻を踏んでみましたw