『ZERO』『ワン・ゼロ』ときたからついでに

…と言っちゃなんだがマンガじゃなくて小説なんだけど、広瀬正『マイナス・ゼロ』(ISBN:4087504913)を紹介しておくことにしよう。何と言っても個人的にこれこそ日本のベストSFと思うからだ。

終戦から18年、空襲のさなかの約束を守り、当時住んでいた場所を訪れた浜田俊夫。そこに現れたのは行方不明だった憧れの隣のお姉さん伊沢啓子の乗ったタイムマシン!
翌日ひとりタイムマシンに乗り込んだ俊夫は、手違いから昭和7年の東京に取り残されてしまい・・・。

てなお話。まあタイムトラベルものですな。
しかしよくあるタイムトラベルものと違うのは、何より作品の舞台である「昭和ヒト桁の東京」という世界に対する作者の「愛」だろう。
そんなノスタルジィと、時間ものの真骨頂であるギミックと、緻密なトリックと、暖かささえ感じるストーリー。それらが絶妙なバランスで絡み合った作品だ。SFに免疫がなくても…、つかそういう人にこそ読んでもらいたい。


そしてこの作品を面白いと思ったなら、広瀬正の全作品を読むことをお奨めする。
何しろ「いよいよこれから」というときに他界してしまったから、幸か不幸か*1たった6冊しか残されていないのだ。しかしいずれも戦前の東京、ジャズ、クラッシックカーなどへの「愛」が感じられ間違いなく面白い。
司馬遼太郎が彼の作品のファンだったらしいことも、何となく納得できてしまうはずだ。
(ASIN:B00005MX5Y)

*1:不幸に決まってる